瀕死のコグマと救った漁師の感動の実話

    ワイルドライフのドキュメンタリーに心を動かされることってよくありますよね。今回ご紹介するのも、読むと心温まる野生動物のお話。犠牲や希望、恐怖、愛する家族の命を救うクマと人間というふたつの異なる種の交わりに関する実話なのです。凍えるように寒い湖で子を置き去りにせざるを得なかった母グマ、そして偶然通りかかった漁師。さてどのような物語が生まれたのでしょうか。

    1. 残酷な湖

    The Vygozero Lake Watercourse with Stock Footage Video (100% Royalty-free) 8979109 | Shutterstock
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    舞台はロシア北西部に位置するビゴゼロ湖。広大で水が水温−20度と恐ろしく冷たいため、人間はおろかほとんどの野生動物は到底泳ぐことなどできません。そのことを念頭に入れて、これから登場するクマの赤ちゃんに何が起こるのか、読み進めてみてください。

    2. つらい決断

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    ある時、そんな湖を泳ぐクマの親子がいました。なぜそんな湖を生まれたばかりのコグマと泳いで渡ろうと思ったのか、私たちには想像がつきません。母グマは体力がありましたが、2頭のコグマは残念ながらそうではありませんでした。2頭は必死に母親の背中にしがみついていましたが、氷点下の水の中では母グマの強靭さと意志も歯が立ちません。すぐに子どもたちを乗せて泳ぐ体力もなくなり、子どもたちは母親について泳ぐことができません。しまいに湖の真ん中でどこへ行けばいいのかも分からず取り残されてしまったのです。

    3. 厳しい犠牲

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    母グマというのは子どものためには自分の身をも犠牲にする動物として知られていますが、今回はそうではありませんでした。頑張ってコグマたちを連れて行こうという当初の意図とは裏腹に、最終的には子どもたちを見捨てて泳いで行きました。専門家なら首を傾げるところですが、生死の問題になってくると生存本能が母性を凌駕するということなのでしょう。

    4. 湖の急流に打つ手なし

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    湖の底流が非常に激しかったことも、母グマの行動と関係していました。ただでさえ凍りつく水を2頭のコグマを背負って泳いでいた状況で、水の流れと格闘しなければならなかったのです。次第に親子は離れ離れになり、母グマはなんとか無事に岸にたどり着きました。ですがそこにコグマの姿はありません。湖の真ん中にポツンと取り残され、疲れ切って絶望しているのです。2頭は生き残れるのでしょうか?

    5. 遠くに救世主?!

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    母親において行かれて冷たい水の中でパニックになっているコグマの気持ちが想像できるでしょうか。絶望的な状況だったそんな時、奇跡的に一艘のボートが通りかかりました。溺れかけたコグマたちをみてボートに乗っていた漁師たちは何かがおかしいと感じます。母グマの姿がそばに見当たらないのです。ここからは時間との戦い。なんとかしなければ、と漁師たちが立ち上がります。

    6. 疲れ切った赤ちゃんたち

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    ボートを近づけると状況がよりはっきりしてきました。赤ちゃんグマたちは疲れ切って水面から顔を少し出しているので精一杯な状態でした。どうやってそんなコグマをボートに引っ張り上げればいいのか、漁師たちは魚ではなくコグマを釣り上げることになるとは想像もしていなかったでしょう。母グマがまだ近くにいたため漁師たちは自分たちの実の危険性も感じていました。急がないといけないとはいえ、母親がもう少し遠くへ行くまで待たなくてはなりませんでした。

    7. 救出計画

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    母グマの様子を見ながら漁師は作戦を練ります。何が最善の策なのか、慎重に計画を練る必要があります。コグマとはいえクマはクマですから、何が起こるかわかりません。彼らはカメラもセットしてクマの救出作業の一部始終を収めることにしました。そのおかげで私たちもこの記事がかけているんです!そうしているうちにコグマのうちの1匹が足を使って自力でボートにはいあがろうとし始めました。

    8. コグマに手を貸す漁師

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    ボートの出っ張りがあまりに高く、弱った状態のコグマにはとてもよじ登ることができません。そこで漁師は立てた計画を実行に移します。色々と考えた末、釣り具を使ってコグマをつかむという方法を漁師のひとりが思いつき、とにもかくにもやってみようということになりました。

    9. 作戦は成功したのか…?!

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    はじめのうちは漁師たちが考えた救出方法はうまくいくかと思われました、ところがクマの体をボートまで引き上げるにはコグマの場所が遠すぎました。やはり自分たちの腕で直接コグマたちを引き上げる他なさそうです。それがどんなに危険なことであろうと、漁師たちはコグマたちが徐々に弱って死んでいくのを黙って見ているわけにはいきませんでした。命がけで救出に当たろうと心を決めます。

    10. コグマを信じて…

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    ボートから身を乗り出しすぎると自分たちの体がクマに引っ張られ、凍るような水に落ち、最悪の場合コグマに攻撃されてしまいます。こうなったらコグマたちが自分たちの救出作戦に協力してくれることを祈るほかありません。その時漁師たちはコグマとの間に不思議な絆が感じられたと言います。心が通じ合ったということだけで、危険を冒してそのコグマたちを救う理由として十分だったのです。

    11. 作戦その2

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    今度は釣り具ではなく釣り用のネットを使ってコグマたちを水中から引っ張り上げることにした漁師たち。まさに大量の魚を一網打尽にするときの要領です。最初からこの案を実行しなかったのは、ネットが当然ながらコグマを捕まえるようには設計されていないからです。それでもやってみる価値はある!ネットが破れたらそのときはそのとき!と漁師たちはネットを湖に投げ入れ、1頭めの救出に取り掛かりました。なんとかクマを捕まえてネットをたぐり寄せようとします。タイムリミットが刻一刻と近づいていました…

    12. 重量挙げのような重さ

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    1頭めがネットにかかり、漁師たちはボートの近くまで引っ張ります。コグマがネットの中でケガをしないよう、そして最後の力をふりしぼって自分たちを襲うことのないよう慎重に進めなくてはいけません。漁師が自分たちを救おうとしてくれているなんて、きっとコグマたちにはわからないですからね。コグマをびっくりさせないようにネットを持ち上げようとして、初めて漁師たちはコグマの重さに驚愕します。救出するのがコグマでよかった、あれが母親だったら到底無理だった、と彼らは回顧しています。ぬれた毛皮の重さも相まって、引き揚げには相当な力が入りそうです。

    13. あと少し!そして…

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    寒い環境での釣りに慣れていたベテランだったからこんな作業もできたのかもしれません。すさまじい体力と精神力でネットを引っ張り続け、ようやくコグマがボートのそばまで!そしてついに漁師たちは1頭めをボートに乗せることに成功しました!でも喜ぶにはまだ早いです。もう1頭残っているのを忘れてはいけません。時間ももうほとんどありません。ですが1頭の救出でコツと自信を得た漁師たち、残りの力を振り絞って再びネットを引く、引く、引く!少しして、ボートの上には無事2頭のコグマが!一漁師も安心して喜びを分かち合います。

    14. 悲しそうなコグマたち

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    溺れ死にそうだったところを危機一髪で救出された赤ちゃんグマ。疲れ切って恐怖と寒さで震えていました。おそらくそれが人間との初めての対面だったのでしょう。コグマの状態を見て漁師たちの胸には彼らを連れ帰って看病してやりたいという気持ちがよぎったことでしょう。ですがコグマたちが求めているのは母親の温もりで、漁師たちには母グマがそう遠くないところにいることもわかっていました。するべきことはただひとつ。

    15. 母親はいずこに?

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    問題はコグマたちをどこに連れて行けばいいのか、ということでした。漁師たちは母親が向かったであろう、体を休められそうな場所を手当たりしだい探しました。しばらくしてようやく見つけ、岸にボートを近づけます。コグマと母グマがどんな反応をするのか、漁師たちには見当もつきませんでしたが、とにかく最後まで見届けようと固く決意します。

    16. 岸で待機

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    コグマたちをおろそうと岸に降り立った時も母グマは姿を現しませんでした。自分の子どもたちに何をしようというのか、じっくり見てやろう、とでもいうような母グマの気配を木の影から感じたと漁師たちは語っています。コグマたちを開放してやるのが一番だと漁師たちもわかっていたので、疲れて弱った2頭を抱き上げて陸上まで運びました。母親が来るかどうか心配でしばらくそこにいると、近くの別の岸から何かが水に飛び込む音が。見ると母グマがものすごいスピードで泳いでこちらに向かっています。安堵の気持ちと同時に漁師たちは突如恐怖にかられます。自分たちがコグマたちを救ったことを、母グマがわかってくれる保証なんてどこにもないのです。

    17. 感動の再会

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    命がけでコグマを救った後にまた命を危険にさらしては本末転倒。漁師たちは急いでボートに戻り、ハッピーエンドを祈りながら岸を離れます。遠ざかりながらもクマの親子から目を離すことはしません。母親が岸にたどり着いてやっと漁師たちは心から安堵しました。1度手放してしまった子どもたちにもう1度会うことができた母グマ、もう2度とそばを離れることはないでしょう。

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